日本の大学卒業後、就職せずに親の扶養のまま永住権を申請できるか#

日本の大学を卒業したお子様が、企業へ就職することなく、親御様の扶養に入った状態で永住許可申請を行うことができるかという問題は、在留資格の手続きにおいて非常に繊細で複雑なテーマです。

一般的に、日本の大学を卒業した留学生は、就職して就労ビザ(「技術・人文知識・国際業務」など)を取得するか、就職活動のための「特定活動」ビザへ変更するのが通常のルートです。しかし、親御様がすでに永住者であったり、日本で安定した生活基盤を築いている場合、「子供は働かずに永住権を取れないか」と考えるケースがあります。

結論から申し上げますと、このケースでの永住申請は**「現在の在留資格の種類」と「これまでの日本での居住歴」によって可能性が大きく異なりますが、一般的には非常にハードルが高い**と言わざるを得ません。

ここでは、制度の仕組みと審査のポイントを客観的に解説します。

永住許可の要件と「独立の生計」の特例#

まず、永住許可には主に以下の3つの要件があります。

  1. 素行善良要件: 法律を守り、日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいること。
  2. 独立生計要件: 日常生活において公共の負担にならず、その有する資産または技能等から見て将来において安定した生活が見込まれること。
  3. 国益適合要件: その者の永住が日本の利益に合すると認められること(長期間の在留、納税義務の履行など)。

原則として、申請人は「自分自身の力で食べていける(独立生計)」必要があります。しかし、この要件には特例があります。

申請人が「日本人、永住者または特別永住者の配偶者または子」である場合、独立生計要件は免除(緩和)されます。 つまり、子供自身に収入がなくても、世帯全体(主に親)に十分な収入があり、安定した生活ができているのであれば、経済的な面では要件を満たすと判断されます。

このルールだけを見ると、「親が永住者なら、無職の子供でも永住申請できる」と思われがちですが、実際には次の壁が存在します。

在留資格の種類の壁#

最も重要なのは、そのお子様が現在どのような在留資格(ビザ)を持っているかです。

1. 「留学」ビザの場合#

お子様が留学生として来日し、現在も「留学」ビザを持っている場合、卒業後にそのまま(就職せずに)永住申請をして許可される可能性は極めて低いです。 なぜなら、留学ビザからの永住申請には、原則として「就労資格に変更後、数年間の就労実績」が求められるからです。また、大学卒業をもって「留学」の目的は終了するため、卒業後に就職もしないまま日本に滞在し続けること自体、ビザの該当性という観点で問題が生じます。

2. 「家族滞在」ビザの場合#

親御様が就労ビザで、お子様が「家族滞在」ビザの場合も同様に困難です。大学卒業は通常、自立すべき年齢(成人)に達したとみなされます。「家族滞在」は原則として扶養を受けることを前提としていますが、学校を卒業した成人が、正当な理由なく無職のまま扶養を受け続けることは、入管審査においてネガティブに捉えられる傾向があります。多くの場合、就職して就労ビザへの変更を促されます。

3. 「定住者」ビザの場合(幼少期から日本にいる場合)#

可能性が残されているのは、お子様が幼少期から日本で暮らしており、すでに「定住者」の在留資格を持っているケースです。 「定住者」の在留資格を持つ子供であれば、親の扶養に入っている状態でも、世帯単位での収入が審査されるため、永住許可の可能性があります。ただし、この場合でも「大学を卒業した成人がなぜ就職しないのか」という点は審査官の心証に影響を与えます。正当な理由(大学院進学準備、家業の手伝い等実態があるもの、あるいは健康上の理由など)の説明が求められることになるでしょう。

「国益適合要件」における納税と公的義務#

仮に経済的な要件(世帯年収)をクリアできたとしても、永住審査で厳格に見られるのが「国益適合要件」、特に公的義務の履行です。

大学を卒業した成人の場合、国民年金や国民健康保険の支払い義務が発生します。親の扶養に入っている場合、健康保険は被扶養者としてカバーされるかもしれませんが、国民年金については20歳以上であれば加入義務があります(学生納付特例を使っていた期間を除く)。

もし、大学卒業後に「無職」である期間が長引き、その間に年金の未納や遅納が発生していると、永住申請は不許可となる可能性が非常に高くなります。「親の扶養だから払わなくていい」という認識は、入管審査では通用しません。申請人本人に支払い能力がない場合でも、世帯主が責任を持って支払っている必要があります。

就職活動中の「特定活動」ビザでの申請#

大学卒業後、就職先が決まっていない場合は「特定活動(継続就職活動)」ビザへの変更を行うのが一般的です。 このビザはあくまで「就職活動を行うための期間」として与えられるものです。このステータスのまま永住申請を行うことは、制度上禁止されているわけではありませんが、「生活の安定性」という観点で極めて不利になります。 「現在は定職についていないが、永住権が欲しい」という主張は、将来的な生活基盤の安定性を証明することが難しく、審査において大きなマイナス要因となります。

推奨される進路#

以上のことから、日本の大学を卒業したお子様が永住権を目指すための最も確実で誠実なルートは以下の通りです。

  1. 就職する: まずは企業等に就職し、適切な就労ビザ(「技術・人文知識・国際業務」等)を取得する。
  2. 実績を作る: 社会人として日本で生活し、納税・年金などの義務を自力で履行する実績を積む。
  3. 申請する: 親御様が永住者等の場合、就労開始後1年程度経過した時点(かつ日本在住歴が通算10年以上、あるいは「定住者」等の要件を満たす場合)で永住申請を行う。

まとめ#

大学卒業後に就職せず、親の扶養のままで永住申請を行うことは、お子様が「定住者」などの身分系在留資格を既に持っている場合を除き、制度上非常に困難です。また、可能である場合でも、年金の納付状況や「なぜ働かないのか」という点について合理的な説明が不可欠です。

永住権は、日本社会の一員として安定して暮らしていくための資格です。大学卒業という節目においては、まずは就労資格を取得し、社会人としての基盤を固めることが、結果として永住権取得への一番の近道となります。


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