永住申請中の転職:入管への報告タイミングと注意点#
日本の永住許可申請は、結果が出るまでに数ヶ月から1年以上かかることが一般的です。この長い審査期間中に、キャリアアップや個人的な事情により転職が決まるケースは決して珍しくありません。その際、「転職したことを入管に報告する必要があるのか」「いつ、どのように報告すればよいのか」といった疑問が生じます。
結論から申し上げますと、永住申請中に転職した場合は、速やかに出入国在留管理庁(以下、入管)へ報告する必要があります。この報告は、法律で定められた義務であると同時に、永住許可の審査においても非常に重要な意味を持ちます。この記事では、永住申請中の転職に関する報告のタイミング、方法、そして審査に与える影響について、客観的な視点から詳しく解説します。
転職時に発生する2種類の報告義務#
永住申請中に転職した場合、入管に対して行うべき手続きは、大きく分けて2つ存在します。これらは目的も提出先も異なるため、混同しないよう注意が必要です。
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所属機関に関する届出(14日以内の義務) これは永住申請中かどうかにかかわらず、就労系の在留資格(「技術・人文知識・国際業務」など)を持つすべての外国人に課せられた義務です。前の会社を退職した日、または新しい会社に入社した日から14日以内に、勤務先が変わったことを入管に届け出る必要があります。この届出は、オンライン、郵送、または地方出入国在留管理局の窓口で行うことができます。この届出を怠ると、罰則の対象となったり、将来の在留資格更新で不利になったりする可能性があります。
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永住審査部門への報告(審査への影響) 上記とは別に、現在進行中である永住許可申請の審査官に対して、転職という重要な変更事項を報告する必要があります。これは、審査官が申請者の状況を最新の情報で正確に判断するために不可欠な手続きです。この報告を怠ると、申請内容と実態が異なると判断され、不許可の原因となる可能性があります。
永住審査部門への最適な報告タイミング#
永住審査部門への転職の報告は、「新しい会社での勤務を開始した後、速やかに」行うのが最も望ましいタイミングです。
内定が出た段階や退職前ではなく、新しい会社に実際に入社し、雇用関係が開始されてから報告することが重要です。なぜなら、入管は新しい勤務先での雇用が確実であることを確認する必要があるからです。
具体的な手続きとしては、まず前述の「所属機関に関する届出」を14日以内に行い、それと前後して、あるいは同時に、永住審査部門への報告を行うとスムーズです。遅くとも、入社後1ヶ月以内には報告を完了させることが推奨されます。
報告の方法と提出すべき追加資料#
永住審査部門への報告は、口頭ではなく書面で行うのが一般的です。申請時に控えとして受け取った申請受付票に記載されている受付番号を明記した「資料提出通知書」という書面を作成します。
この通知書には、「永住許可申請中に転職したため、関連資料を提出します」といった旨を記載し、以下のような書類を添付して、申請を提出した地方出入国在留管理局の永住審査担当部門宛てに提出します。
主な追加提出資料の例:
- 新しい会社の資料:
- 登記事項証明書
- 会社の規模がわかる資料(パンフレット、ウェブサイトのコピーなど)
- 直近の決算報告書(損益計算書、貸借対照表)のコピー
- 申請者自身の資料:
- 新しい雇用契約書のコピー
- 雇用条件通知書のコピー
- 在職証明書(新しい会社発行のもの)
- 転職理由書(任意ですが、キャリアの一貫性などを説明するために有効です)
これらの資料を提出することで、転職後も永住許可の要件である「生計の安定性」や「素行の善良さ」を満たしていることを客観的に示すことができます。
転職が永住審査に与える影響#
転職したという事実そのものが、直ちに永住申請で不利になるわけではありません。審査官が注目するのは、転職の「中身」です。
- 収入の安定性: 転職後の給与が以前の職場と同等かそれ以上であり、今後も安定した収入が見込めることが重要です。年収が大幅に下がった場合、生計要件を満たさないと判断されるリスクが高まります。
- 雇用の継続性: 新しい職場での雇用形態が正社員であり、会社の経営が安定しているかどうかも見られます。転職直後は試用期間中であることが多いですが、その点だけで不利になることは通常ありません。むしろ、長期的に安定して働ける環境かどうかが重視されます。
- キャリアの一貫性: これまでの職務経歴と関連のある分野への転職であれば、キャリアアップとして好意的に評価される傾向があります。全く異なる業種へ転職した場合は、その理由や将来性を合理的に説明できると良いでしょう。
報告を怠った場合、審査の最終段階で入管が職場の変更を把握した際に、情報の隠蔽を疑われる可能性があります。これは「誠実さ」を欠くと見なされ、審査に深刻な悪影響を及ぼすため、正直かつ迅速な報告が最善の策です。
まとめ#
永住申請中に転職が決まった場合、法律上の義務である「所属機関に関する届出」を14日以内に行うと共に、永住審査部門に対しても、転職の事実を速やかに報告することが極めて重要です。
新しい勤務先の情報や雇用条件を証明する書類を揃え、書面で提出することで、審査官に最新かつ正確な情報を提供し、審査をスムーズに進めることができます。転職は人生の大きな転機ですが、適切な手続きを踏むことで、永住許可取得への影響を最小限に抑えることが可能です。