日本人の配偶者と離婚後、高度人材として永住を目指す際の注意点#
日本人の配偶者として日本で生活していた方が、離婚という人生の転機を迎えた場合、在留資格について大きな決断を迫られます。これまで「日本人の配偶者等」の在留資格で滞在していた基盤がなくなり、日本に引き続き滞在するためには、別の在留資格へ変更する必要があるからです。
その選択肢の一つとして、ご自身の学歴や職歴、年収などを活かして「高度専門職」の在留資格を取得し、将来的に「永住者」を目指すという道があります。このルートは、専門的なスキルを持つ方にとって有力な選択肢ですが、移行プロセスにはいくつかの重要な注意点が存在します。この記事では、その具体的なポイントを順を追って解説します。
1. 離婚後の在留資格に関する義務と期限#
まず最も重要なのは、離婚後の手続きを迅速に行うことです。「日本人の配偶者等」の在留資格は、その名の通り日本人の配偶者であることが前提です。離婚によってその身分関係が解消されると、在留資格の基盤を失うことになります。
- 入管への届出義務: 離婚した日から14日以内に、出入国在留管理庁(入管)へ「配偶者に関する届出」を提出する義務があります。これは法律で定められており、怠ると罰則の対象となる可能性があります。
- 在留資格の取消しリスク: 離婚後、正当な理由なく6ヶ月以上「日本人の配偶者等」としての活動(配偶者との同居・扶助)を行わずに滞在を続けると、在留資格が取り消される可能性があります。
このため、離婚後は速やかにご自身の状況に合った別の在留資格(就労ビザ、定住者など)への変更申請を準備し、開始する必要があります。その有力な候補が「高度専門職」です。
2. 「高度専門職」への変更要件の確認#
「高度専門職」は、学歴、職歴、年収、年齢、研究実績、資格、日本語能力といった項目をポイントに換算し、合計が70点以上に達した場合に認められる在留資格です。この資格へ変更するためには、以下の点を満たす必要があります。
- ポイント計算: まず、ご自身の経歴がポイント計算基準で70点以上に達するかを正確に確認することが不可欠です。特に、「日本人の配偶者等」として専業主婦(主夫)であった期間や、資格外活動の範囲内で行っていたパートタイムの仕事は、原則として「職歴」のポイントには加算されません。日本国内での正規の就労経験がポイント計算上、重要になります。
- 就職先の確保: 高度専門職の在留資格を申請する前提として、ポイント計算の基礎となる活動内容(例:研究、技術開発、経営管理など)に合致する日本の企業や機関から内定を得て、雇用契約を締結している必要があります。離婚後に就職活動から始める場合は、在留期間の期限も考慮しながら計画的に進めなければなりません。
3. 高度人材ポイントを利用した永住許可申請の要件#
高度専門職の大きなメリットの一つに、永住許可申請に必要な在留期間が短縮される優遇措置があります。しかし、ここには重要な注意点があります。
- 原則的な永住要件: 通常、永住許可を得るためには、原則として継続して10年以上日本に在留していることが必要です。
- 高度専門職の優遇措置:
- 70点以上のポイントがある方は、高度専門職として3年間継続して在留することで永住申請が可能になります。
- 80点以上のポイントがある方は、高度専門職として1年間継続して在留することで永住申請が可能になります。
ここで最も注意すべきは、この**「3年間」または「1年間」という期間は、あくまで「高度専門職」の在留資格で活動していた期間でなければならない**という点です。つまり、それ以前に「日本人の配偶者等」として日本に何年滞在していても、その期間はこの短縮要件の計算には含まれません。
例えば、日本人の配偶者として5年間滞在した後に離婚し、80点以上で高度専門職の資格を取得した場合でも、永住申請が可能になるのは、高度専門職として1年間活動した実績を積んだ後、ということになります。
4. 永住許可審査における総合的な視点#
ポイントや在留期間の要件を満たすことはスタートラインに過ぎません。永住許可は、日本の永住者としてふさわしいかどうかが総合的に審査されます。
- 公的義務の履行: 税金(住民税、所得税など)や公的年金、健康保険料の納付義務をきちんと果たしていることが極めて重要です。過去に未納や滞納があると、審査に深刻な影響を与えます。離婚を機に世帯が変わり、ご自身でこれらの手続きを行うことになるため、特に注意が必要です。
- 素行の善良性: 交通違反や犯罪歴がないことなど、日本の法律を遵守していることが求められます。
- 独立した生計を営めること: 離婚後、ご自身の収入で安定した生活を送れる資産や技能があることが審査されます。高度専門職としての年収がこの証明の一助となります。
- 身元保証人: 永住申請には、日本人または永住者である身元保証人が必要です。離婚後は、元配偶者に依頼することが難しくなるケースが多いため、職場の上司や親しい友人など、新たな身元保証人を見つけておく必要があります。
まとめ#
日本人の配偶者と離婚後、高度人材として永住を目指す道は、ご自身のキャリアを日本で発展させるための現実的な選択肢です。しかし、そのためには計画的な準備が不可欠です。
まず、離婚後速やかに在留資格変更の手続きに着手し、ご自身の経歴が高度専門職のポイント要件を満たすか、そしてそれに見合う就職先を確保できるかを見極める必要があります。さらに、永住を目指す上では、短縮要件の正しい理解と、納税や年金といった公的義務を誠実に履行し続けることが、何よりも重要となります。