高度専門職1号ロから2号への変更申請を選択すべきケースについて#
日本の在留資格制度において、「高度専門職(Highly Skilled Professional)」は、高度な能力を持つ外国人材を受け入れるための重要な枠組みです。多くの高度専門職1号(ロ)保持者は、要件を満たした後、最終的なゴールとして「永住者」への変更を目指す傾向にあります。
しかし、個々のライフスタイルや家族構成によっては、永住権ではなく「高度専門職2号」へのステップアップを選択する方が、明確なメリットを享受できる場合があります。本稿では、どのような状況において高度専門職1号から2号への変更を経由、あるいは選択すべきかについて、制度の仕組みと実務的な観点から解説します。
高度専門職2号の基本定義とメリット#
まず、高度専門職2号の定義を確認します。これは、高度専門職1号としての活動を3年以上行った実績のある外国人が取得できる在留資格です。
最大の特徴は、在留期間が「無期限」となることです。これにより、数年ごとの在留期間更新許可申請の手間から解放されます。また、高度専門職1号で認められる複数の在留資格にまたがる活動に加え、ほぼ全ての就労活動が可能となります。
では、なぜ「永住者」ではなく「高度専門職2号」を選ぶべきなのでしょうか。その答えは、高度専門職特有の「優遇措置」の継続性にあります。
ケース1:本国から親を呼び寄せたい場合#
高度専門職2号を選択すべき最大の理由は、親の帯同に関する優遇措置にあります。
高度専門職(1号および2号)の保持者は、以下の条件を満たす場合、自身または配偶者の親を日本に呼び寄せることができます。
- 世帯年収が800万円以上であること。
- 本人または配偶者の7歳未満の子(養子を含む)を養育する場合、または本人または配偶者が妊娠中であり介助を必要とする場合。
これに対し、「永住者」の在留資格には、親を呼び寄せるための法的な枠組み(告示に基づく特定活動など)が原則として存在しません。人道的な配慮が必要な特別な事情(高度医療が必要など)がない限り、永住者が親を日本に呼び寄せて同居することは極めて困難です。
したがって、日本でキャリアを積みながら、7歳未満の子育てを親に手伝ってもらいたいと考えている家庭にとっては、永住権を取得してしまうと、親のビザが更新できなくなるリスクが発生します。このようなケースでは、子供が7歳になるまでは「高度専門職2号」を取得して無期限の在留資格を確保しつつ、親の帯同要件を維持するという戦略が非常に有効です。
ケース2:家事使用人を雇用し続けたい場合#
親の帯同と同様に、家事使用人(メイドなど)の雇用に関しても高度専門職には優遇措置があります。一定の年収要件(世帯年収1,000万円以上など)を満たせば、外国人の家事使用人を帯同、あるいは雇用することが可能です。
永住者へ変更した場合、原則として家事使用人の雇用に関する優遇措置は失われます(※例外的に、高度専門職の時から継続して雇用している家事使用人を、永住許可後も継続して雇用できる特例はありますが、要件は厳格です)。
新規に家事使用人を雇いたい場合や、将来的に雇用を検討している場合は、永住権よりも高度専門職2号の方が柔軟に対応できる可能性が高いため、自身のライフプランに合わせた慎重な選択が求められます。
ケース3:審査期間の短縮と手続きの簡素化#
審査にかかる「時間」も重要な要素です。現在、日本の永住許可申請の審査期間は長期化の傾向にあり、申請から結果が出るまで1年以上かかるケースも珍しくありません。また、身元保証人の確保や、過去数年間にわたる年金・健康保険の納付状況の厳密な審査など、提出書類も膨大です。
一方で、高度専門職2号への変更申請は、通常の在留資格変更許可申請と同様、比較的短期間(標準処理期間としては2週間から1ヶ月程度、実務上は1〜3ヶ月程度)で結果が出ます。
「更新の手間をなくして無期限在留にしたい」という希望を早期に叶えたい場合、あるいは永住申請の厳格な審査(特に公的義務の履行状況の軽微な遅れなど)に不安がある場合は、まずは高度専門職2号を取得し、在留基盤を盤石にすることが推奨されます。高度専門職2号であれば、身元保証人は不要であり、永住申請ほど広範囲な過去の素行調査は行われない傾向にあります。
ケース4:将来的に母国へ帰国する可能性がある場合#
「永住者」は、日本に生活の本拠があることが前提の資格です。将来的に母国へ帰る、あるいは第三国へ移住する計画がある場合、長期間日本を不在にすると再入国許可の有効期限切れや、永住権の取り消し対象となる可能性があります。
高度専門職2号も在留資格である以上、再入国許可等のルールはありますが、あくまで「就労資格の延長線上にある無期限資格」という性質上、永住者という身分に伴う心理的・社会的な重責(日本社会への恒久的な定着)とは少し性質が異なります。将来のキャリアプランが流動的で、必ずしも「日本に骨を埋める」と決めていない場合は、高度専門職2号の方が心理的なハードルが低いと言えるでしょう。
まとめ#
「高度専門職1号」から「永住者」への変更は、多くの外国人材にとって理想的なルートですが、唯一の正解ではありません。特に、幼い子供の養育のために親を呼び寄せたい場合や、家事使用人の雇用を継続したい場合においては、高度専門職2号を選択する方が制度上のメリットを大きく享受できます。
また、審査のスピードや要件の難易度を考慮しても、まずは高度専門職2号を取得し、無期限の在留資格を確保した上で、子供の成長やライフステージの変化に合わせて将来的な永住申請を検討するという「2段階のアプローチ」は、極めて合理的で賢明な戦略と言えます。
自身の家族構成、キャリアプラン、そして現在必要としているサポート体制を総合的に判断し、最適な在留資格を選択してください。