本国で離婚未成立のまま再婚した場合の永住権申請への影響#

国際結婚において、当事者の母国での法的手続きと日本での手続きにタイムラグや認識の齟齬が生じることがあります。中でも深刻な問題となり得るのが、本国での離婚手続きが完全に完了していない状態で、日本国内において日本人等との新たな婚姻届が受理されてしまうケースです。これは法律上「重婚」の状態とみなされる可能性が高く、将来的に永住権(Permanent Residence)を申請する際、極めて高い確率で不許可の原因となります。

ここでは、なぜ日本で婚姻届が受理されていても入管審査で問題視されるのか、重婚的状態が永住許可の要件にどう抵触するのかについて、客観的な法制度の観点から解説します。

日本の民法と国際私法における重婚の扱い#

日本の民法第732条は「配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない」と規定しており、重婚を明確に禁止しています。また、法の適用に関する通則法においても、婚姻の成立要件は各当事者の本国法によるとされています。

しかし、実務上、日本の市区町村役場では、外国人が日本方式で婚姻する場合、その外国人が「独身であること」を証明する書類(婚姻要件具備証明書など)の提出を求めます。この段階で、本国の書類上はまだ前婚が解消されていないにもかかわらず、何らかの理由で独身証明書が発行されたり、あるいは申述書等によって形式的に婚姻届が受理されたりするケースが稀に存在します。

役場で婚姻届が受理され戸籍に記載されたとしても、それは「形式的に届出が通った」という事実に過ぎず、本国法および日本法に照らして「実質的に有効な婚姻である」ことが公的に保証されたわけではありません。入国管理局(出入国在留管理庁)の審査は、この実質的要件を厳格に確認します。

永住許可要件との抵触:素行善良要件#

永住権のガイドラインには、以下の3つの主要要件が定められています。

  1. 素行が善良であること
  2. 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
  3. その者の永住が日本国の利益に合すると認められること

重婚状態は、このうち「1. 素行が善良であること」および「3. 日本国の利益に合すると認められること」の2点において致命的な欠格事由となります。

日本国法が禁じている重婚状態にあることは、法令遵守の観点から「素行が善良」とは評価されません。また、日本の公序良俗に反する婚姻関係を継続している外国人に永住権を付与することは、日本の国益に合致しないと判断されます。

入管審査における事実確認の厳格さ#

永住許可申請においては、申請人(外国人)の本国から発行された結婚証明書や、家族関係証明書の提出は必須ではありませんが、場合によっては追加資料として求められることや、婚姻の経緯を詳細に説明する理由書の整合性が問われます。

特に、現在の在留資格が「日本人の配偶者等」である場合、その在留資格の根拠は「適法な婚姻」にあります。もし本国で前婚が解消されていない事実が発覚すれば、永住権が不許可になるだけでなく、現在の在留資格の更新にも支障をきたすリスクがあります。また、申請時にこの事実を隠して申請し、後に発覚した場合は、虚偽申請としてさらに重い処分(在留資格の取消し等)の対象となり得ます。

「配偶者」としての実体の欠如#

「日本人の配偶者等」の在留資格や、それを基礎とした永住申請において重要なのは、単に書類が整っていることではなく、「有効な婚姻関係が実体を伴って継続していること」です。

国際私法の観点から、双方が独身であることが婚姻の成立要件である以上、片方が前婚を解消していなければ、後婚は無効または取り消し得べきものとなります。入管審査官は法律の専門家としての側面も持つため、日本の戸籍謄本には婚姻の記載があっても、本国の身分関係と矛盾がある場合、その婚姻の有効性に疑義を持ちます。

結果として、「法的に有効な婚姻関係にある配偶者」とは認められず、永住許可の前提条件そのものが崩れることになります。

解決に向けた法的手続きの必要性#

このような状況にある場合、永住権を申請する前に、まずは法的な身分関係の不整合(重婚状態)を解消することが先決です。

具体的には、本国の裁判所や行政機関において前婚の離婚手続きを正式に完了させ、その効力を確定させる必要があります。国によっては離婚制度そのものが複雑であったり(フィリピンのアヌルメント等)、長い時間を要したりすることがありますが、これを省略して日本の永住権を取得することは制度上不可能です。

本国での離婚が成立した後、その日付が日本での再婚の日付よりも後になってしまう場合、再婚の時点で独身ではなかったことになるため、日本での婚姻届を一度訂正、あるいは再手続きする必要が生じる場合もあります。これらの手続きを経て、名実ともに「適法な婚姻」となった段階で初めて、永住権申請の土俵に乗ることができると考えられます。

まとめ#

本国で離婚が未成立のまま日本で再婚している「重婚的再婚」の状態は、日本の民法に違反するだけでなく、入管法上の「素行善良要件」および「国益適合要件」を満たさないため、永住権の取得は極めて困難です。

役所で婚姻届が受理されているからといって、入管局がその婚姻を無条件に正当と認めるわけではありません。永住許可を目指すのであれば、まずは本国法および日本法の双方において適法な身分関係を整えることが、遠回りのようで唯一の確実な道筋となります。


運営者情報  |  プライバシーポリシー  |  お問い合わせ

© 2026 Japan Permanent Residency Q&A Database