「連れ子」の永住申請において実親の同意書がない場合の対応と代替資料#

日本における永住許可申請において、配偶者の連れ子(実子)を同時に申請する場合、あるいは連れ子が後から永住申請を行う場合、本国にいる「もう一人の実親(元配偶者)」からの同意書を求められることがあります。これは、国際的な子の奪取(連れ去り)を防ぐ観点や、親権に関するトラブルを未然に防ぐために入国管理局が慎重に審査を行うためです。

しかし、死別や離婚の経緯、あるいは音信不通などの事情により、実の親から同意書を取得することが物理的または精神的に不可能なケースは多々あります。本記事では、そのような状況における審査のポイントと、同意書に代わるべき資料について解説します。

なぜ実親の同意書が必要とされるのか#

入出国在留管理庁(入管)が実親の同意書を求める背景には、ハーグ条約(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約)の理念や、親権をめぐる法的な係争を避ける意図があります。

もし、日本側での永住を許可した後に、本国の実親から「子供を勝手に日本に定住させた」「親権を侵害された」という訴えがあった場合、国際的な問題に発展しかねません。そのため、入管は「本国にいる親も、子供が日本で永住することに同意しているか」を確認しようとします。通常、これは「同意書(Letter of Consent)」という形式で提出します。

同意書が得られないケース別:代替資料の考え方#

同意書が得られない場合、単に「もらえませんでした」と主張するだけでは不許可のリスクが高まります。事情に応じた客観的な立証資料(代替資料)が必要です。

1. 実親と死別している場合#

もっとも明確なケースです。この場合、同意を得る相手が存在しないため、その事実を証明します。

  • 死亡証明書(Death Certificate): 公的機関が発行したもの。
  • 除籍謄本: 日本の戸籍等に死亡の記載がある場合。

これらの資料に日本語訳を添付して提出することで、同意書は不要となります。

2. 離婚時に単独親権を得ている場合#

離婚判決や合意により、申請人(日本にいる親)が「単独親権」や「監護権」を完全に有している場合、法的には相手方の同意は必須ではないと判断される傾向にあります。ただし、入管は慎重を期すため、以下の資料で法的権利関係を明確にする必要があります。

  • 離婚判決文(Court Judgment)または調停調書: 親権(Custody)および監護権(Legal and Physical Custody)が申請人にあることが明記されている部分。
  • 公証された離婚合意書: 国によっては裁判を経ない協議離婚の場合、公証役場等で作成された合意文書。

ここで重要なのは、「相手方が親権を喪失していること」の証明です。

3. 音信不通・行方不明の場合#

離婚後、相手方がどこに住んでいるか不明であり、連絡を取る手段が一切ない場合です。この場合、「連絡を取ろうとしたが不可能であった」という事実の積み上げが必要です。

  • 理由書(Statement of Reason): 音信不通になった経緯、最後の連絡時期、現在の状況を詳細に記したもの。
  • 送金記録の不在証明: 養育費を受け取っていないことの証明(通帳のコピーなど)。
  • 通信記録: 連絡がつかないことを示すメールのエラー画面や、SNSのアカウント削除の証拠など(証拠能力としては弱いため、理由書の補強として使用)。
  • 公的な不在証明: 本国での失踪届や、警察への行方不明者届の控えがある場合は強力な証拠となります。

4. 連絡は取れるが、同意を拒否されている場合#

DV(ドメスティック・バイオレンス)等の事情で関わりたくない場合や、相手が意地悪で同意しない場合がこれに該当します。このケースが最も難易度が高くなります。

  • 陳述書・理由書: なぜ同意が得られないのか、過去のDV被害や不仲の経緯を詳細かつ客観的に記述します。
  • 保護命令や警察の相談記録: 過去にDVがあった事実を証明できる公的文書。
  • 第三者の嘆願書: 日本での生活が子供の福祉(Best Interest of the Child)に資するものであることを、学校の先生や地域の民生委員などに証明してもらう書類。

「理由書」の重要性と書き方#

代替資料の中でも、特に重要なのが申請人自身が作成する「理由書」です。公的な証明書がない場合、審査官はこの理由書をもとに状況を判断します。

理由書には以下の要素を具体的かつ時系列に沿って記述する必要があります。

  1. 離婚・別居の経緯: なぜ離れることになったのか。
  2. 子供の養育状況: 日本に来てからの期間、現在の生活状況、相手方からの養育費の有無。
  3. 接触の有無: 相手方と現在交流があるか、面会交流の状況。
  4. 子供の意思: 子供がある程度の年齢(概ね10歳以上など)の場合、子供自身が日本での永住を望んでいること。
  5. 同意書がない理由: なぜ取得できないのか、取得しようとする努力(連絡等)は行ったか。

感情的になりすぎず、客観的事実(いつ、どこで、誰が、どうした)を積み上げ、「子供の利益のためには日本での永住が最適であり、実親の同意がないことは永住を不許可にする理由には当たらない」と論理的に展開することが求められます。

まとめ#

連れ子の永住申請において実親の同意書は原則必要ですが、絶対条件ではありません。重要なのは「子供の福祉」と「法的正当性」です。同意書が提出できない合理的な理由と、それを裏付ける客観的な代替資料、そして誠実な理由書を提出することで、許可を得られる可能性は十分にあります。それぞれの家庭の事情に合わせ、もっとも説得力のある資料を準備することが肝要です。


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