事業計画書における将来の収益見通しが永住審査の継続性に与える影響について#

日本の永住権申請、特に「経営・管理」ビザ等の就労資格を持つ経営者が申請を行う際、事業の安定性と継続性は極めて重要な審査ポイントとなります。その中で、将来のビジョンを示す「事業計画書」および、その中に記載される「収益見通し」は、単なる希望的観測ではなく、申請人が将来にわたり日本で安定して生活できるかを判断するための客観的な資料として扱われます。

ここでは、事業計画書における将来の収益見通しが、永住審査における「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有する(独立生計要件)」の判断、とりわけ事業の継続性の評価にどのような影響を与えるかについて解説します。

永住審査における「継続性」の重要性#

永住許可のガイドラインには、「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること」が要件として挙げられています。これは、現時点で生活ができていることだけではなく、将来にわたっても公共の負担にならず、自立して生活を維持できる見込みがあることを意味します。

会社経営者の場合、個人の収入は会社からの役員報酬によって支えられています。したがって、会社の経営が不安定であれば、個人の生活基盤も危ういと判断されます。入管庁の審査官は、過去の決算報告書(通常直近3期分など)を確認しますが、それと同時に、提出された事業計画書を通じて「この安定が今後も続くのか」という点を見極めます。つまり、収益見通しは、過去の実績と未来をつなぐ「継続性の証明」としての役割を果たします。

収益見通しの「根拠」と審査への影響#

事業計画書に記載する収益見通しにおいて最も重視されるのは、数字の大きさよりも「実現可能性」と「根拠の明確さ」です。

1. 過去の実績との整合性#

提出された事業計画書の収益見通しが、直近の決算書の内容とあまりに乖離している場合、審査において疑義を持たれる可能性があります。例えば、過去数年間横ばい、あるいは赤字続きであったにもかかわらず、申請直後の年度から急激にV字回復し、多額の黒字を計上する計画になっている場合です。

このような計画を示す場合、なぜ収益が改善するのかという具体的な根拠(新規大口契約の締結、不採算部門の撤退、新市場への参入と具体的な勝算など)を客観的な資料とともに提示する必要があります。根拠なき右肩上がりのグラフは、審査官に対し「永住許可を得るためのらあわせ」であるという印象を与えかねず、かえって心証を悪化させるリスクがあります。

2. 赤字および債務超過と将来見通し#

経営者の永住申請において、会社の「債務超過(資産よりも負債が多い状態)」は非常にネガティブな要素となります。一般的に、直近で債務超過の状態にある場合、事業の継続性に重大な疑義があるとみなされ、不許可となる可能性が高まります。

また、単年度の「赤字」についても注意が必要です。一時的な設備投資や為替の影響による赤字であれば、事業計画書においてその理由と、翌期以降のリカバリー計画を論理的に説明することで、継続性を主張できる余地があります。しかし、慢性的な赤字体質であり、かつ事業計画書上の収益見通しでも抜本的な改善策が示されていない場合は、将来的な倒産リスクが高いと判断され、独立生計要件を満たさないという結論に至ることがあります。

役員報酬と会社利益のバランス#

収益見通しは、会社が将来生み出す利益を示すものですが、これは申請人自身の「役員報酬」の原資でもあります。

永住審査では、申請人の年収も重要な審査項目です。年収要件を満たすために無理に役員報酬を引き上げ、その結果として会社が赤字に転落してしまうケースが見受けられます。事業計画書を作成する際は、以下のバランスが保たれていることが「継続性」の観点から重要です。

  • 十分な役員報酬: 申請人が日本で安定して暮らせるだけの報酬額が確保されていること。
  • 会社の黒字維持: 役員報酬を支払った後でも、会社として利益を出し、内部留保を蓄積できる健全な財務体質であること。

将来の収益見通しにおいて、売上が伸び悩む中で役員報酬だけが高止まりしている計画は、経営の持続可能性が低いと判断されます。逆に、会社を黒字にするために役員報酬を極端に下げて生活保護水準に近づくような計画も、独立生計要件を満たしません。

まとめ#

事業計画書における将来の収益見通しは、永住審査において、申請人が日本で安定した生活を継続できるか否かを測るバロメーターとなります。入管庁は単に提示された「予測数字」を見るのではなく、その数字が導き出されたプロセス、過去の実績との整合性、そして市場環境に基づいた客観的な根拠を厳しく審査します。

誠実かつ実現可能な計画を示すことこそが、事業の継続性を証明し、永住許可への信頼を築くための鍵となります。


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