高度専門職の在留資格と所属機関の経営破綻について#
高度専門職(Highly Skilled Professional)の在留資格は、日本の経済成長への貢献が期待される優れた能力を持つ外国人材を受け入れるための制度です。この資格は、学歴、職歴、年収などの項目をポイント化し、一定基準を満たした者に与えられます。しかし、その活動の基盤となる所属機関(勤務先の会社)の経営が安定していることが大前提となります。
本稿では、高度専門職の在留資格を申請中、またはすでに保有している期間中に、所属機関が倒産や民事再生手続きに入った場合、その在留資格がどのような影響を受けるのか、そして、どのような対応を取るべきかについて客観的に解説します。
所属機関の経営状況と在留資格の関係#
高度専門職の在留資格は、特定の所属機関での活動を前提として許可されています。ポイント計算においても、「所属機関が中小企業基本法に定める中小企業者で、試験研究費等の比率が3%超」といった加点項目があるように、所属機関の状況は審査の重要な要素です。
そのため、所属機関が倒産(破産)や民事再生といった経営危機に陥った場合、それは「在留資格の活動基盤の安定性が失われた」と判断される可能性があります。これは、在留資格の新規申請、変更申請、更新申請のいずれにおいても、不許可のリスクを著しく高める要因となります。
特に、会社が破産手続きに入り、事業を停止して清算される場合は、雇用契約が終了し、活動の基盤そのものが消滅することを意味します。
在留資格への具体的な影響と義務#
所属機関の経営破綻は、外国人材の在留資格に直接的な影響を及ぼします。具体的に求められる対応と、怠った場合のリスクについて解説します。
1. 所属機関に関する届出の義務#
まず、会社との雇用契約が終了した場合(解雇、退職、会社の倒産による消滅など)、中長期在留者には、14日以内に出入国在留管理庁(以下、入管)へ「所属機関に関する届出」を提出する義務があります。この届出は、オンラインまたは最寄りの地方出入国在留管理局の窓口で行う必要があります。この義務を怠ると、罰金の対象となったり、将来の在留資格申請で不利に扱われたりする可能性があります。
2. 在留資格の取消事由への該当#
所属機関を離職した後、正当な理由なく3ヶ月以上、本来の在留資格に対応する活動を行わない場合、在留資格の取消事由に該当する可能性があります(出入国管理及び難民認定法第22条の4)。したがって、会社の倒産後は、速やかに次の就職先を見つけるための転職活動を開始しなければなりません。
ケース別:具体的な対処法#
状況に応じて取るべき対応は異なります。ここでは、申請中と資格保有中の2つのケースに分けて解説します。
ケース1:在留資格の申請中に所属機関が倒産した場合#
高度専門職への変更許可申請や認定証明書交付申請の審査中に、申請の根拠となっていた所属機関が倒産した場合、原則としてその申請は許可されません。審査の前提となる「安定した活動基盤」が失われたためです。
この場合、速やかに新たな就職先を探し、内定を得た上で、一度現在の申請を取り下げ、新しい会社を所属機関として再度申請し直す必要があります。在留期限が迫っている場合は、特に迅速な行動が求められます。
ケース2:高度専門職の資格を保有中に所属機関が倒産した場合#
すでに高度専門職の在留資格を保有している方が、所属機関の倒産により離職した場合、前述の通り、14日以内の届出と3ヶ月以内の転職活動が必須です。
新しい就職先が見つかったら、以下の手続きを行います。
- 新しい職場でも高度専門職の基準を満たす場合: 新しい所属機関の情報で再度ポイント計算を行い、基準(70点または80点)を満たしていることを確認した上で、入管に「所属機関の変更に係る届出」を提出します。
- 新しい職場で高度専門職の基準を満たさない場合: 職種や年収の変更によりポイントが基準に満たなくなった場合は、「技術・人文知識・国際業務」など、他の適切な在留資格への「在留資格変更許可申請」を行う必要があります。この申請が許可されるまでは、新しい職場で就労することはできませんので注意が必要です。
民事再生手続き中の場合#
倒産(破産)が会社の清算を意味するのに対し、民事再生は事業の継続を前提とした再建手続きです。したがって、民事再生手続きが開始されても、直ちに雇用契約が終了するわけではありません。
しかし、入管の審査においては、その会社の経営の安定性・継続性が厳しく評価されます。在留資格の更新や変更の際には、通常の提出書類に加え、再生計画案や事業の将来性を客観的に説明する資料などを提出し、今後も安定的に雇用が継続され、在留活動を行うことが可能であることを慎重に立証する必要があります。給与の遅配や減額なども、審査に不利な影響を与える可能性があります。
まとめ#
所属機関の経営破綻は、高度専門職の在留資格にとって非常に深刻な事態です。このような状況に直面した場合は、以下の点を念頭に置き、冷静かつ迅速に行動することが重要です。
- 現状の正確な把握: 会社が破産するのか、民事再生なのか、法的手続きの状況を正確に理解します。
- 義務の履行: 離職後14日以内の「所属機関に関する届出」を必ず行います。
- 迅速な転職活動: 在留資格取消のリスクを避けるため、速やかに新しい就職先を探します。
- 適切な手続き: 新しい就職先が決まったら、自身の状況に応じて「所属機関の変更届出」または「在留資格変更許可申請」を行います。
不確実な点や手続きに不安がある場合は、出入国在留管理インフォメーションセンターや地方出入国在留管理局に相談し、正確な情報を得ることが不可欠です。