永住申請中の引っ越しに伴う住所変更届と入管への報告手続き#
永住許可申請の審査期間は、近年長期化の傾向にあり、申請から結果が出るまでに1年以上を要するケースも珍しくありません。この長い待機期間中に、転勤やライフスタイルの変化によって引っ越しをすることは決して珍しいことではありません。
しかし、永住申請中に住所が変わった場合、単に市役所で住民票を移すだけでは不十分な場合があります。適切な処置を行わないと、審査結果の通知が届かなかったり、最悪の場合、連絡が取れないことを理由に審査に不利な影響が生じたりするリスクがあります。
ここでは、永住申請中に引っ越しをした場合に必須となる手続きについて、行政手続きと審査実務の両面から解説します。
市区町村役場での手続きと在留カードの裏書き#
まず最初に行うべきは、全ての在留外国人に義務付けられている基礎的な行政手続きです。
新しい住所に住み始めてから14日以内に、引っ越し先の市区町村役場で「転入届」を提出する必要があります。この際、必ず在留カードを持参し、カードの裏面に新住所の記載を行ってもらいます。
日本の住民基本台帳ネットワークと出入国在留管理庁のシステムは連携しているため、役所で転入届を出せば、法的な「住居地の届出」は完了したことになります。しかし、審査中の案件がある場合、これだけでは不十分であるという認識を持つことが重要です。
入管への別途報告が必要な理由#
「役所で住所変更をしたのだから、入管も新しい住所を知っているはずだ」と考えるのは自然ですが、永住申請の実務においては注意が必要です。
役所でのデータ更新と、審査部門が保有している「申請人への連絡先データ」がリアルタイムで、かつ自動的に連動して宛名ラベルに反映されるとは限りません。審査官は申請時に提出された書類に基づいて審査を進めており、結果通知書や追加資料の請求書を発送する際、申請書に記載された旧住所へ送付してしまう可能性があります。
そのため、永住申請中に住所が変わった場合は、速やかに審査を行っている地方出入国在留管理局に対し、任意の様式または指定の申出書にて「住所変更の報告」を行うことが強く推奨されます。これにより、重要書類の不着事故を防ぐことができます。
具体的な提出書類と提出先#
入管への報告には、主に以下の書類を準備します。
- 申請内容変更届出書(報告書) 任意の様式でも受理されることが多いですが、申請人の氏名、生年月日、申請受付番号、旧住所、新住所、転居日を明記します。「永住許可申請中であるため、結果通知の送付先を変更してください」という旨を記載します。
- 新しい住民票の写し 世帯全員の記載があり、マイナンバーの記載がないものが望ましいです。
- 在留カードの写し(表・裏) 裏面に新住所が記載されたあとのものをコピーします。
これらの書類を、申請中の地方出入国在留管理局の永住審査部門へ郵送、または窓口で提出します。郵送の場合は、紛失を防ぐために特定記録郵便や簡易書留を利用し、追跡ができるようにしておくことが賢明です。
管轄が変更になる場合の注意点#
引っ越しによって管轄の地方出入国在留管理局が変わる場合(例:東京都から大阪府へ引っ越す場合など)は、特に注意が必要です。
東京出入国在留管理局で審査中だった案件は、引っ越し先の大阪出入国在留管理局へ移管されることになります。この「資料の移送」という物理的な手続きが発生するため、審査期間が通常よりもさらに数ヶ月延びる可能性があります。
管轄が変わる場合でも、まずは「申請をしていた元の入管」へ住所変更の連絡を入れ、指示を仰ぐのが確実です。
郵便局の転送サービスと審査への影響#
入管への手続きと並行して、郵便局の「転居・転送サービス」の申し込みも不可欠です。入管からの通知は、「簡易書留」や「特別送達」などの重要郵便で送られてくる場合と、普通郵便のハガキで送られてくる場合があります。
転送届が出ていれば、旧住所宛ての郵便物も1年間は新住所へ転送されます。しかし、「転送不要」と記載された郵便物の場合は転送されずに入管へ戻ってしまいます。入管からの郵便物が「宛所不明」で返送されることは、在留状況の安定性を疑われる要因となり得るため、絶対に避けなければなりません。
また、「引っ越し自体が審査に悪影響を与えるか」という点については、合理的な理由(栄転、結婚、より良い住環境への転居など)であれば、基本的にマイナスにはなりません。ただし、転職を伴い収入が不安定になったり、収入に見合わない高額な家賃の物件へ転居したりした場合は、「生計の安定性」の観点から審査対象となるため、追加の説明資料が求められることがあります。
まとめ#
永住申請中の引っ越しは、単なる住所変更手続き以上の慎重さが求められます。役所での手続きに加え、入管の審査部門へ直接、書面で新住所を通知することで、通知の不着トラブルを回避できます。
長期間に及ぶ審査を無事に通過するためには、行政側のシステム連携に過度に依存せず、自ら積極的に情報を更新し報告する姿勢が不可欠です。