日本に拠点を持たないデジタルノマドが永住権を取得する可能性と現実的な課題#

近年、場所にとらわれずに働く「デジタルノマド」というライフスタイルが世界的に注目を集めています。日本においても、2024年4月より「デジタルノマド(特定活動)」という新たな在留資格の運用が開始されました。これに伴い、「海外企業に雇用されたまま、あるいはフリーランスとして日本で生活し、最終的に永住権を取得できるか」という疑問を持つ方が増えています。

結論から申し上げますと、現在導入されている「デジタルノマドビザ」を利用して滞在を続けても、日本での永住権取得は制度上、極めて困難、あるいは不可能です。しかし、在留資格の種類を変更し、日本国内に法的な「拠点」や「実績」を作ることによって、将来的な永住申請への道が開ける可能性は残されています。

本稿では、入管制度の原則に基づき、デジタルノマド的な働き方と永住許可の要件とのギャップ、そして永住権を目指すための現実的なルートについて詳しく解説します。

デジタルノマドビザ(特定活動)の法的限界#

まず理解しておくべき重要な点は、2024年に新設されたデジタルノマド向けの在留資格(特定活動・告示53号)の性質です。このビザは、年収1,000万円以上の高所得者を対象としていますが、以下の特徴により永住権申請の基礎となる「居住歴」にはカウントされません。

  1. 在留期間の上限: 滞在期間は6ヶ月に限られており、更新(延長)ができません。
  2. 中長期在留者ではない: この資格は観光ビザ(短期滞在)の延長線上に位置づけられており、住民登録を行う「中長期在留者」には該当しません。したがって、住民票が作成されず、国民健康保険や厚生年金への加入義務も発生しません(民間保険でのカバーが要件となります)。

永住許可の基本要件の一つに「引き続き10年以上日本に在留していること」がありますが、デジタルノマドビザでの滞在期間は、この「10年」には一切含まれないのです。一度帰国し、半年後に再度デジタルノマドビザで来日したとしても、それは断続的な短期滞在の繰り返しに過ぎず、永住への実績は積み上がりません。

「拠点を持たない」ことと永住要件の矛盾#

質問にある「日本に拠点を持たない」という点は、永住審査において非常に不利に働きます。永住許可は、文字通り「日本に生活の本拠を移し、将来にわたって日本社会の一員として生活すること」を認める処分です。

審査においては以下の要素が厳格にチェックされます。

  • 生活の安定性: 日本国内に資産や安定した収入源があるか。
  • 公的義務の履行: 日本の税金(所得税・住民税)や社会保険料(年金・健康保険)を適正に支払っているか。

海外の企業から給与を受け取り、日本に納税義務が生じない(あるいは租税条約等で免除される)状態で、かつ日本国内に事業所や雇用関係という「拠点」がない場合、日本社会への定着性は低いと判断されます。「旅をするように暮らす」というスタイル自体が、定住性を求める永住許可の趣旨と相反する側面があるのです。

永住権取得を目指すための代替ルート#

デジタルノマド的な働き方を維持しつつ、将来的に日本の永住権を取得するためには、現在の「特定活動(デジタルノマド)」から、就労可能な「中長期の在留資格」へ切り替える必要があります。具体的には以下の方法が考えられます。

1. 経営・管理ビザへの変更#

ご自身で日本法人を設立し、その代表として日本に滞在する方法です。この場合、日本国内に物理的なオフィス(拠点)を構え、日本法人として売上を計上し、役員報酬から日本の税金・社会保険を支払うことになります。これにより、永住申請に必要な納税実績と居住実績を作ることができます。ただし、資本金500万円以上の用意や、事業の継続性・安定性を証明する事業計画が必須となります。

2. 高度専門職ビザの活用#

学歴、職歴、年収などをポイント換算し、一定以上の点数がある場合に付与される「高度専門職」ビザを取得する方法です。特に、高度専門職(1号・2号)や、特別高度人材(J-Skip)として認定されれば、通常10年必要な居住要件が「1年」または「3年」に短縮されます。 ただし、これには日本の公的年金や医療保険への加入が前提となるため、海外企業に所属したまま申請する場合でも、日本国内に「所属機関」を確保するか、あるいは上述の通り自ら法人を設立してその法人を所属機関とするスキーム構築が必要になるケースが大半です。

3. 日本企業への就職(技術・人文知識・国際業務)#

ノマド的な自由さは制限されますが、日本企業と雇用契約を結び、通常の就労ビザを取得するのが最も確実なルートです。近年ではフルリモートを認める日本企業も増えているため、形式上は日本企業に所属しながら、実質的に場所に縛られない働き方を実現できる可能性はあります。

結論:制度上の「定住」へのシフトが必要#

「日本に拠点を持たず、海外収入のみで生活し、日本の社会保障システムにも組み込まれない」という完全なデジタルノマドの状態のままでは、永住権の取得は不可能です。

永住権を目指すのであれば、どこかのタイミングで「旅行者(ノマド)」から「居住者(レジデント)」へとステータスを変更し、日本国内に税務上・生活上の拠点を確立する覚悟が必要です。それは、日本という国に対して「納税」と「社会貢献」というコミットメントを示すプロセスでもあります。

まとめ#

デジタルノマドビザはあくまで短期滞在のための制度であり、永住権への道は閉ざされています。永住を希望する場合は、経営・管理ビザや高度専門職ビザなど、中長期在留者としての資格を取得し、日本国内での納税・社会保険加入の実績を積み重ねることが不可欠です。


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