警察への通報歴は入管の審査に影響するのか#
日本で生活をする外国人の方々の中には、「警察に関わるとビザ(在留資格)に悪影響があるのではないか」という不安を抱えている方が少なくありません。特に、トラブルの被害者になった場合や、夫婦喧嘩がヒートアップして近所から通報された場合など、「警察への通報歴」が後の入管審査(在留期間更新許可申請や永住許可申請など)で不利になるのかどうかは、非常に切実な問題です。
ここでは、日本の入管制度の原則と実務的な運用に基づき、警察への通報歴が審査に与える影響について客観的に解説します。
被害者や通報者としての連絡は原則として影響しない#
結論から申し上げますと、あなたが事件や事故の「被害者」として警察に通報した、あるいは目撃者として通報したという事実だけで、入管の審査が不許可になることは原則としてありません。
日本の警察は公共の安全と秩序を維持するために存在しており、国籍に関わらず、日本に在留するすべての人は警察の保護を受ける権利があります。入管法が審査において重視するのは、申請人の「素行(Good Conduct)」です。犯罪の被害に遭い、助けを求めたという行為は、素行不良には該当しません。
例えば、空き巣に入られた、路上で暴力を振るわれた、財布を盗まれたといったケースで警察に被害届を出したとしても、それが次回のビザ更新や永住申請のマイナス要因として扱われることはないのです。むしろ、適切な法的手続きを行うことは、日本社会のルールを尊重する行為と捉えることもできます。
夫婦喧嘩や騒音トラブルで警察が来た場合#
最も判断に迷いが生じやすいのが、夫婦喧嘩(ドメスティック・バイオレンス含む)や、部屋での騒音などで近隣住民やパートナーが警察に通報し、警察官が自宅に来たケースです。
逮捕されなければ「前科」にはならない#
警察官が現場に到着し、事情聴取を行ってその場を収めただけの場合、あるいは警察署で話を聞かれた後に帰宅を許された場合は、通常「逮捕」や「起訴」には至っていません。これを「警察沙汰」と呼ぶことはあっても、法的な意味での「犯罪歴(前科)」とは異なります。
入管が審査で厳しくチェックするのは、刑事処分を受けた記録です。したがって、喧嘩の仲裁や騒音の注意を受けた程度であれば、それが直ちに在留資格の取り消しや更新不許可につながる可能性は低いと言えます。
繰り返されるトラブルへの懸念#
ただし、警察への通報が度重なる場合、別の側面から審査に影響するリスクはゼロではありません。例えば「日本人の配偶者等」の在留資格を持つ方が、配偶者と警察沙汰になるほどの喧嘩を繰り返している場合、入管は「婚姻の安定性・継続性」に疑問を持つ可能性があります。
警察の記録自体が問題というよりも、「平穏な結婚生活が営まれていない」という事実が入管に伝わった場合、在留期間が短くなったり(例:3年から1年へ)、最悪の場合は実態がないとして更新が難しくなったりすることは考えられます。
審査に明確に影響を与えるケース#
警察との関わりにおいて、明らかに入管審査へ悪影響を及ぼすのは、申請人が「被疑者(容疑者)」となり、法的な処分を受けた場合です。
- 逮捕・勾留された場合: 身柄を拘束された事実は重く受け止められます。不起訴(起訴猶予含む)になったとしても、その経緯や内容は審査官の心証に影響を与える可能性があります。
- 罰金刑以上の刑が確定した場合: 略式起訴による罰金(交通違反の反則金ではなく、刑事罰としての罰金)を受けた場合、素行善良要件を満たさないと判断される可能性が高まります。
- 退去強制事由に該当する場合: 一定以上の重い刑罰を受けた場合、在留資格の更新どころか、日本からの退去(強制送還)の対象となります。
素行善良要件と情報の共有#
永住許可申請においては、「素行が善良であること」が必須条件となります。ここでは通常の更新よりも厳しい基準が適用されます。軽微な法令違反であっても、それが繰り返されていれば「日本の法令を遵守していない」とみなされ、不許可の原因となり得ます。
また、警察と入管は法務省や警察庁を通じて連携していますが、すべての些細な通報記録がリアルタイムで入管のデータベースに登録されているわけではありません。しかし、逮捕歴や刑事処分歴は共有されるシステムになっています。
まとめ#
警察への通報歴そのものが、直ちにビザの不許可を招くわけではありません。特に、身の危険を感じて助けを求めることは正当な権利であり、今後の審査を恐れて通報を躊躇する必要はありません。
重要なのは、「犯罪を犯していないか」「法的な処罰を受けていないか」という点です。自身が加害者とならないよう日本の法令を遵守して生活している限り、警察に相談した記録だけで不利益を被ることはないと理解して差し支えありません。もし法的なトラブルに発展してしまった場合は、速やかに法律の専門家に相談することをお勧めします。